2007年 12月 04日
「シミ」や「よごれ」などの話・・・ (後日改訂版 12/6) |
雨漏手よろしく、色づいたぐい呑み。
「使い込んで いい色が付いてきたなぁ・・・。」と思う人と、
「すごい汚れちゃった。」と思う人と。
「臭いも気になるし、きれいにならないものか・・。」という相談を受け、
「では、出来るだけやってみましょう。」と、少し実験のようにやらせてもらいました。
まず、食器などに使われる漂白剤に浸しました。
一気に液に浸すと、地に染み込んでしまい、後で洗っても薬剤が抜け切れないので、
しばらく水に浸してから、漂白剤を溶いた液に浸しました。
・・・一日間では、たいして取れませんでしたが、
まる二日間浸すと だいぶ綺麗になりました。
「なるほどこんな感じでシミが取れてくるんだ・・・。」
でも、この機会に もう一つ確認してみたい事があります。
焼き直してみて、どこまできれいになるのか改めて確認したかったのです。
本焼きの窯に入れれば 確実に焼き飛びますが、
それでは釉調が変わってしまったりするので、
素焼程度の温度での確認をしたかったのです。
いろいろ想定される事態も持ち主に確認し、
特に、今回は、赤絵が施されているので、
それに影響が出ない830℃で焼き直してみました。
・・・結果、バッチリです。
多少貫入にまだ残っていますが、ほぼ元の様に綺麗になりました。
以前にも、白化粧をしたカップを使っている方が、
「新しいのに、一気に すごい色になっちゃった。」なんて言っていた事がありました。
土物の陶器の特徴の一つに、吸水性があるという事があります。
つまり、水気を吸い込むということで
(土の種類や焼成方法によって差はだいぶありますが)、
紅茶やコーヒー、醤油やソース、油など・・・なんでも吸い込んでしまうのです。
洗っても表面しかきれいにならず、吸い込んだ液までは洗えません。
これが、カビや臭いの原因になったりもします。
では、どうしたらいいかというと、
・まず、使用直前にきれいな水で濡らす事。
→こうすると、後から別の液体が吸い込まれにくくなります。
サッと水に濡らすだけでも、ずいぶん効果があります。
・使用後、扉のあるような食器棚にしまう場合は、天日や食器乾燥機などでよく乾かす事。
→表面を拭いただけでは、吸い込まれた水気は取れず、カビなどが発生しやすくなります。
こんなところを、とりあえず気にすると、だいぶいい状態で使えるかと思います。
土物陶器は、「使うほどに色付いて育つ。」なんて言われたりして、
各々の使われ方で、焼き物の育ち方も変わります。
愛情もてるように育てたいものですね。
追記 :
後日記事を読み返しながら思ったのですが、
何故、今まで焼き直しをやらなかったかというと、
汚れをなくす目的ではなかったのですが、
制作上いろいろな試みをする中で、
上絵や素焼の窯の温度でも、
釉調が変わったりなどの事故を幾度となく経験していたからなのです。
たとえば、
ツヤのある釉が、失透釉になってしまったり、
織部釉に強固な酸化皮膜が付いてしまったり、
いらぼ釉(鉄釉系)の色調が変わったり・・・、
他にも、
温度が間違えば色絵の具が流れ出すし、色調も変わるし・・・etc.、
何しろいろいろな事故がありました。
窯の温度の上げ割れ下げ割れなどの可能性も考えられます。
焼き直しができる環境にいる方も
安易に焼きなおしの窯に入れることなく、
素材や状況をよく吟味し、慎重に、ご検討の程を。
・・・なんで、こんなに丁寧に写真を撮りながら作業をしたかと言いますと、
実は、
絵画の保存修復を仕事にしている友人が、
その「保存修復」をテーマにしての展覧会を企画していて、
日頃仕事にしている絵画や彫刻以外にも工芸も含めたいと考えたようで、
陶芸の事はよく知らないので、面倒を見て欲しいと
金工作家の友人を介して、話が回ってきたからなのです。
(よく分かりにくい文章ですが、要は、話を持ってきた金工作家も、
元の企画をしている人も、それぞれ私の友人だったと言う事です・・・。)
あらためて考えてみると、
陶芸の『修復』や『修理』は、陶芸家の仕事ではなく、
それぞれの専門家がいて・・・
たとえばよく知られている修理の技法に、「金継ぎ」があります。
「割れ」「欠け」「にゅう(ヒビ)」など、陶芸作品の主な事故に対応しているのですが、
これは本格的には、漆を触る人の仕事となります。
金継ぎなどの仕事の実際は、
それを仕事にもしている知人の漆芸家に見せてもらうとして、
自分が対応できるのは、「よごれ」「カビ」「臭い」などの事故対策かな・・・と、
冒頭のレポートになったわけです。
どのような展覧会になるのか、実は皆目見当が付いていないのですが、
正月に千葉市美術館でやるそうです。
また近づいたら、ご連絡いたします。
「使い込んで いい色が付いてきたなぁ・・・。」と思う人と、
「すごい汚れちゃった。」と思う人と。
「臭いも気になるし、きれいにならないものか・・。」という相談を受け、
「では、出来るだけやってみましょう。」と、少し実験のようにやらせてもらいました。
まず、食器などに使われる漂白剤に浸しました。
一気に液に浸すと、地に染み込んでしまい、後で洗っても薬剤が抜け切れないので、
しばらく水に浸してから、漂白剤を溶いた液に浸しました。
・・・一日間では、たいして取れませんでしたが、
まる二日間浸すと だいぶ綺麗になりました。
「なるほどこんな感じでシミが取れてくるんだ・・・。」
でも、この機会に もう一つ確認してみたい事があります。
焼き直してみて、どこまできれいになるのか改めて確認したかったのです。
本焼きの窯に入れれば 確実に焼き飛びますが、
それでは釉調が変わってしまったりするので、
素焼程度の温度での確認をしたかったのです。
いろいろ想定される事態も持ち主に確認し、
特に、今回は、赤絵が施されているので、
それに影響が出ない830℃で焼き直してみました。
・・・結果、バッチリです。
多少貫入にまだ残っていますが、ほぼ元の様に綺麗になりました。
以前にも、白化粧をしたカップを使っている方が、
「新しいのに、一気に すごい色になっちゃった。」なんて言っていた事がありました。
土物の陶器の特徴の一つに、吸水性があるという事があります。
つまり、水気を吸い込むということで
(土の種類や焼成方法によって差はだいぶありますが)、
紅茶やコーヒー、醤油やソース、油など・・・なんでも吸い込んでしまうのです。
洗っても表面しかきれいにならず、吸い込んだ液までは洗えません。
これが、カビや臭いの原因になったりもします。
では、どうしたらいいかというと、
・まず、使用直前にきれいな水で濡らす事。
→こうすると、後から別の液体が吸い込まれにくくなります。
サッと水に濡らすだけでも、ずいぶん効果があります。
・使用後、扉のあるような食器棚にしまう場合は、天日や食器乾燥機などでよく乾かす事。
→表面を拭いただけでは、吸い込まれた水気は取れず、カビなどが発生しやすくなります。
こんなところを、とりあえず気にすると、だいぶいい状態で使えるかと思います。
土物陶器は、「使うほどに色付いて育つ。」なんて言われたりして、
各々の使われ方で、焼き物の育ち方も変わります。
愛情もてるように育てたいものですね。
追記 :
後日記事を読み返しながら思ったのですが、
何故、今まで焼き直しをやらなかったかというと、
汚れをなくす目的ではなかったのですが、
制作上いろいろな試みをする中で、
上絵や素焼の窯の温度でも、
釉調が変わったりなどの事故を幾度となく経験していたからなのです。
たとえば、
ツヤのある釉が、失透釉になってしまったり、
織部釉に強固な酸化皮膜が付いてしまったり、
いらぼ釉(鉄釉系)の色調が変わったり・・・、
他にも、
温度が間違えば色絵の具が流れ出すし、色調も変わるし・・・etc.、
何しろいろいろな事故がありました。
窯の温度の上げ割れ下げ割れなどの可能性も考えられます。
焼き直しができる環境にいる方も
安易に焼きなおしの窯に入れることなく、
素材や状況をよく吟味し、慎重に、ご検討の程を。
・・・なんで、こんなに丁寧に写真を撮りながら作業をしたかと言いますと、
実は、
絵画の保存修復を仕事にしている友人が、
その「保存修復」をテーマにしての展覧会を企画していて、
日頃仕事にしている絵画や彫刻以外にも工芸も含めたいと考えたようで、
陶芸の事はよく知らないので、面倒を見て欲しいと
金工作家の友人を介して、話が回ってきたからなのです。
(よく分かりにくい文章ですが、要は、話を持ってきた金工作家も、
元の企画をしている人も、それぞれ私の友人だったと言う事です・・・。)
あらためて考えてみると、
陶芸の『修復』や『修理』は、陶芸家の仕事ではなく、
それぞれの専門家がいて・・・
たとえばよく知られている修理の技法に、「金継ぎ」があります。
「割れ」「欠け」「にゅう(ヒビ)」など、陶芸作品の主な事故に対応しているのですが、
これは本格的には、漆を触る人の仕事となります。
金継ぎなどの仕事の実際は、
それを仕事にもしている知人の漆芸家に見せてもらうとして、
自分が対応できるのは、「よごれ」「カビ」「臭い」などの事故対策かな・・・と、
冒頭のレポートになったわけです。
どのような展覧会になるのか、実は皆目見当が付いていないのですが、
正月に千葉市美術館でやるそうです。
また近づいたら、ご連絡いたします。
by ikkannet
| 2007-12-04 21:51